個人事業主の配偶者に対する専従者給与と控除とは?

 

小規模な個人事業の場合、夫婦で事業を運営していることが少なくありません。そして、初めて事業を起こした人が戸惑うのが、配偶者に対する「専従者給与」の扱いです。

 

専従者というのは文字の通り、「専ら(もっぱら)事業に従事する者」のことであり、個人事業に従業員として仕事をしてもらう人のことを指します。

 

なお、領収証の整理や電話応対、顧客へのお茶出しなどのお手伝い的な仕事でも専従者として認めてもらえます。

 

専従者給与とは?

専従者給与とは、青色申告白色申告の事業を行っている申告者の配偶者や親族が申告者の事業を手伝っている場合に支払われる給与のことですが、実は、家族への給与は経費にできないのが原則になっていても、専従者給与は要件を満たすことで確定申告において控除を受けることができます。

 

なお、青色申告者の場合は「専従者給与」、白色申告者の場合は「専従者控除」と呼ばれています。

 

ちなみに、申告者が配偶者や親族に専従者給与を支払うと、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなります。

 

青色申告の専従者給与の条件

@青色事業専従者に支払われた給与であること。
A「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出していること。
B給与額が仕事の質や量など、「労務の対価」として相当であると認められる金額であること。
C給与の上限は青色申告専従者の届出で決めた金額であること。

 

Bの給与額が労務の対価より過大であると判定されると、経費として認められません。
Cの給与の上限に関しては、青色申告専従者の届出をした時に「100万円」と申請すると、給与+賞与の合計年額が100万円以内でなければなりません。昇給させたい時は変更届を出して、上限を引き上げる手続が必要になります。

 

青色事業専従者の要件

青色事業専従者は以下の要件を満たしていることが必要です。
@青色申告者と生計を一にする配偶者、または親族であること。
A当年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
B6ヶ月を超える期間(または事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、青色申告者の事業に専ら従事していること。

 

@の「生計を一」にするには、同居の有無は問われません。
Bの6ヶ月を超える期間というのは、「半日×365日」でも、「1日×6ヶ月」でも構いませせん。

 

青色事業専従者の給与額

労務の対価として相当でなければならず、例えば簡単な伝票整理程度の仕事しかしていないのに、50万円の給与を支払うと認めてもらえません。

 

想定としては、パート程度の仕事を手伝ってもらう場合は、求人広告などに出ている業務内容の賃金と比較して設定することになります。

 

なお、月額88,000円以上を支払うと、源泉徴収(給与天引き)による所得税の納付の必要が出るため、個人事業の場合は専従者給与を103万円未満の金額に抑えているのが一般的です。

 

白色申告における専従者控除

白色申告者の専従者へ支払った給与は経費にはならないため、届出書の提出の必要がありません。

 

ただ、ある一定額は白色申告者の専従者控除として申告することができます。

 

白色事業専従者控除の金額

以下の2つの内、どちらか低い金額を控除できます。
@専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者以外の親族は専従者1人に付き50万円を合計した金額
A事業所得等の金額÷(専従者の数+1)

 

例えば、事業収入が800万円、経費が560万円で専従者が配偶者だけだったとします。この場合にAの計算式だと以下になります。
240万円(800万円?560万円)÷(1+1)=120万円

 

従って、低い金額である@の86万円が控除できます。

 

白色事業専従者控除の条件

白色事業専従者は次の要件のすべてに該当する事が必要です。
@白色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族であること。
A当年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
Bその年を通じて6ヶ月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。

 

ちなみに、青色専従者給与と白色専従者控除の条件の違いはBの条項です。

 

例えば、年度途中の8月1日に事業を始めた場合、年末までの事業期間は5ヶ月しかありませんが、青色申告の場合は「事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間」という定めがあるため、3ヶ月仕事に従事すれば条件がクリアできます。

 

一方、白色申告の場合は6ヶ月超の仕事への従事が条件なので、5ヶ月では適用を受けられません。

 

配偶者控除とは?

配偶者控除とは納税者本人に生計を一にする配偶者がおり、配偶者の合計所得金額が38万円以下の場合に適用される控除です。

 

控除対象配偶者に該当すると、納税者本人の所得から所得控除として38万円(控除対象配偶者が年齢70歳以上の場合には48万円)が控除されます。

 

従って、金額だけ見ると、青色事業専従者給与を合計所得金額が38万円以下になるように支給(年収103万円以下)すれば、青色事業専従者給与と配偶者控除の両方が適用できるように思えますが、規定上専従者給与と配偶者控除を一緒に受けることはできません。

 

青色申告と白色申告ではどちらが得なのか?

青色申告の場合は専従者給与の額をそのまま経費にできるため、支給額が年間38万円を上回る場合は、青色事業専従者にした方がお得です。

 

一方、白色申告においては配偶者を専従者としている場合、事業所得等の合計が76万円以下であると(76万円÷(1+1))、配偶者控除の方がお得になります。

 

ちなみに、配偶者が一定額以上の専従者給与を受給すると(パート収入を含めて)、配偶者自身に所得税の納税義務が発生します。